4-6 理科教育への協力
4-6-1 スーパーサイエンスハイスクール
岡崎高校は平成19年度より始まる S S H 継続事業に応募し,この提案が文部科学省より採択された。分子科学研究 所も引き続きこの事業を支援することに合意した。今年度は以下の3課題の活動に協力した。
(1). スーパーサイエンス部活動(化学班)の支援
・「光合成のモデル化実験」(指導者:永田 央准教授)。
. 10月26日に分子研研究室で生徒の研究成果について検討した。この後,11月3日に生徒たちは,日本化学会 東海支部の第18回高等学校化学研究発表交流会に参加出品した。この交流会での発表は毎年恒例になってきた。
・「色素増感太陽電池の研究」(指導者:見附孝一郎准教授)。
. 今年度は研究生徒が1名のみになってしまい,成果発表などは行われなかった。 (2). 科学三昧 in あいち2009
12月24日に岡崎コンファレンスセンターで開催された。詳細は 4-6-4 を参照されたい。
4-6-2 コスモサイエンスコース
分子科学研究所では,平成20年度に愛知県立岡崎北高等学校が国際的に活躍できる科学技術者の育成を目的に新 たに設置した,コスモサイエンスコースへの協力を,岡崎市にある基礎生物学研究所,生理学研究所とともに開始した。 . 「コスモサイエンス・ゼミ」に講師を派遣
開催場所:岡崎北高校 分子研講演者:平本昌宏教授
タイトル:「エネルギー問題の解決は科学者の使命—太陽電池のはなし」 平成 21 年 6 月 13 日(土)
4-6-3 サイエンスパートナーシッププロジェクト
岡崎西高校は,昨年度に続いて今年度も,分子科学研究所宇理須グループと連携したサイエンス・パートナーシップ・ プロジェクト(以下 S P P と略す)に応募して採択された。昨年の内容を発展させた「神経細胞ネットワークの形成と 観察」というテーマで,7月11,15,18日の3日間3年生の理系で希望する生徒約20名と実験等を行なった。
昨年度の講座では,細胞培養の基礎技術の理解,神経細胞の分化とは何かの理解,細胞の蛍光染色による観察を通 して細胞外基質の有用性を考えることを目的とした。今年度は,昨年参加していない新たな生徒を対象としているが, 昨年度の内容をさらに発展させて,神経細胞のネットワークを,計画したパターンで細胞外基質上に形成させていく 方法を学ぶことを目的とした。そのためには,半導体の作製に用いられるフォトリソグラフィーという手法を用いて 作られた微細な鋳型のパターン上で神経細胞の培養を行う。このような実習を通して,「なぜこの方法が必要なのか, この方法のどの点が優れているのか,どのような解析方法を用いて新しい事実を発見していくのか」といった問題解 決方法を学ばせる。そしてこのような実験が神経変性疾患の原因の究明や,医薬品の開発に発展できることを学ぶ。 生物学を学んでいない生徒も多いので,事前学習で,細胞についての基礎的な知識を導入し,再生医療や神経疾患に ついて調べさせ,発表しあう活動を通して,事前に知的好奇心を喚起させ,実習に臨む心構えや態度を養う。そして このような研究には,生物・化学・物理の分野を包括した知識が必要であることや,さまざまな分野に亘った科学技 術がその研究を支えていることを理解させ,科学への興味関心や知的探究心を育成することを狙いとしている。
各班に一人の大学院生または研究生(以下 T A )についてもらい,3日間同じ T Aのもとで実習を行うことにした。 最初に,細胞の情報伝達や実習の概要について宇理須より講義をした後,実験室に移動して各班に分かれて実習を行っ た。各班4枚のディッシュのうち,もっともきれいにスタンプがつき,神経細胞が最も良く分化しているディッシュ を顕微鏡で比較し,一つを選別する。選んだディッシュの細胞を PB S 溶液で洗浄し,ホルマリンで 5 分固定し,界面 活性剤 T riton. X -100 で 5 分処理して細胞膜を破壊し,さらに PB S で洗浄後,アクチンを染色するローダミン・ファロ イジンを加えて暗所で 30 分処理,次に D NA を染色する D A PI を滴下し,蛍光顕微鏡で蛍光染色された細胞を観察した。 3日間を通して,実験の待ち時間がかなりあったが,その間に T Aの学生と実験内容について詳しく説明を受けたり, 研究についての話を聞いたりして,積極的にコミュニケーションを取ることができた。そして難病の原因究明や治療 法の発見のためにこのような基礎研究が役立ち,さらに様々な分野の技術の連携によって研究が成り立っていること を理解することができた。
生徒たちは全員熱心に実験をし,また,非常に楽しそうであった。このような若者がいてくれるなら,科学技術立 国日本の将来も安心だ。というような感じがした。
4-6-4 あいち科学技術教育推進協議会
スーパーサイエンスハイスクール(S S H)研究指定校,愛知スーパーハイスクール研究校,さらに,サイエンスパー トナーシップ(S P P)実施校である愛知県下の16高校が,2009年度に「あいち科学技術教育推進協議会」を立ち上 げた。これは,文部科学省指定 S S H 中核拠点育成プログラムの一貫として,S S H で得た知識や組織力を活用し,全 県的な取り組みとして理数教育の推進を目指したものである。協議会設立のキックオフイベントとして「科学三昧 i n あいち2009」が2009年12月24日に岡崎コンファレンスセンターにて開催された。当イベントにおいては,協議 会加盟校を含む県内の多数の高校から理科教員や高校生が集まり(参加総数300名以上),科学や技術についての先 進的教育活動の紹介が行われた。分子研からは「酸化物半導体薄膜を利用した光波干渉と光発電」「デスクトップ電 子顕微鏡で観るナノの世界」と題した2つの体験型ブースをワークショップに出展し,高校生をはじめとする来場者 との交流を行った。
4-6-5 国研セミナー
このセミナーは,岡崎3機関と岡崎南ロータリークラブとの交流事業の一つとして行われているもので,岡崎市内 の小・中学校の理科教員を対象として,岡崎3機関の研究教育職員が講師となって1985(昭和60)年12月から始 まり,毎年行われている。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。
回 開催日 テーマ 講 師
2 1986.. 1.18 分子研の紹介 諸熊 奎治 教 授
3 1986.. 6.. 7
シンクロトロン放射とは
(加速器・分光器・測定器の見学)
渡邊 誠 助教授 春日 俊夫 助教授 6 1986.10.. 4 人類は元素をいかに利用してきたか 齋藤 一夫 教 授
9 1987.. 6.13 レーザーの応用について 吉原經太郎 教 授
12 1987.. 9.26 コンピュータで探る分子の世界 柏木 浩 助教授 15 1988.. 7.. 2 目で見る低温実験・発光現象と光酸化現象 木村 克美 教 授
18 1988.10.29 人工光合成とは何か 坂田 忠良 助教授
21 1989.. 6.24 星間分子と水—生命を育む分子環境— 西 信之 助教授 24 1989.10.21 常温での超伝導は実現できるか 那須奎一郎 助教授
27 1990.. 6.23
目で見る結晶の生成と溶解
—計算機による実験(ビデオ)—
大瀧 仁志 教 授
30 1990.10.20 電気と化学 井口 洋夫 所 長
33 1991.. 6.22
自己秩序形成の分子科学
—分子はどのようにしてリズムやパターンを作り出すか—
花崎 一郎 教 授
37 1991.12.14 からだと酸素,そしてエネルギー:その分子科学 北川 禎三 教 授 39 1992.. 7.. 7 サッカーボール分子の世界 加藤 立久 助教授 42 1992.11.13 炭酸ガスの化学的な利用法 田中 晃二 教 授 45 1993.. 6.22 化学反応はどのように進むか? 正畠 宏祐 助教授 48 1993.10.. 1 宇宙にひろがる分子の世界 齋藤 修二 教 授
51 1994.. 6.21 分子の動き 伊藤 光男 所 長
54 1995.. 6.20 生体内で活躍する鉄イオン—国境なき科学の世界— 渡辺 芳人 教 授 57 1996.. 6.28 分子を積み上げて超伝導体を作る話 小林 速男 教 授
60 1997.. 6.13 生体系と水の分子科学 平田 文男 教 授
63 1998.. 6.12
電子シンクロトロン放射光による半導体の超微細加工
—ナノプロセスとナノ化学—(UV S OR 見学)
宇理須恆雄 教 授 66 1999.. 6.. 8 レーザー光で,何が見える? 何ができる? 猿倉 信彦 助教授 69 2000.. 6.. 6 マイクロチップレーザーの可能性 平等 拓範 助教授 72 2001.. 6.. 5 ナノメートルの世界を創る・視る 夛田 博一 助教授 75 2002.. 6.. 4 クラスターの科学—原子・分子集団が織りなす機能— 佃 達哉 助教授 78 2003.. 6.24 科学のフロンティア—ナノサイエンスで何ができるか? 小川 琢治 教 授 81 2004.. 6.22 生命をささえる分子の世界—金属酵素のしくみを探る 藤井 浩 助教授 84 2005.. 6.28 環境に優しい理想の化学合成 魚住 泰広 教 授 87 2006.. 6.20 電気を流す分子性結晶の話 小林 速男 教 授 90 2007.. 6.15 光で探る生体分子の形と機能 小澤 岳昌 准教授 93 2008.. 6.17 宇宙の光を地上で作る—シンクロトロン光源— 加藤 政博 教 授 96 2009.. 6.. 9 化学結合をいかに教えるか 平本 昌宏 教 授
4-6-6 小中学校での出前授業
岡崎市内の小中学校を対象に,物理・化学・生物・地学に関わる科学実験や観察を通して,科学への興味・関心を 高めることを目的に,岡崎市教育委員会や各小中学校が企画する理科教育に協力している。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。 岡崎市教育委員会(出前授業)
対象校 開催日 テーマ 講 師
六ツ美北中東海中 2002...1.25 光学異性体とその活用 魚住 泰広 教 授 東海中 2003...2.18 計算機を使って分子を見る 谷村 吉隆 助教授
常磐南小 2005...2...7 光の不思議 岡本 裕巳 教 授
東海中 2006...2...8 モルフォ蝶とナノ化粧品の秘密 小川 琢治 教 授 美川中 2007...2.26 生物から学ぶ光と色 小澤 岳昌 助教授
矢作西小 2007.12...4 原子の世界 櫻井 英博 准教授
六ツ美北部小 2008.10.10 ミクロの世界の不思議 平本 昌宏 教 授
矢作中 2009.12...4 分子と光の秘密 平本 昌宏 教 授
岡崎市立小豆坂小学校(親子おもしろ科学教室)
回 開催日 テーマ 講 師
1 1996.12..5 極低温の世界(液体窒素) 加藤 清則 技官 3 1997.12..4 いろいろな光(紫外線,赤外線,レーザー光) 大竹 秀幸 助手
17 2004.11.30 波と粒の話 大森 賢治 教授
23 2007.11.27 .身の回りにも不思議はいっぱい 青野 重利 教授
4-6-7 職場体験学習
岡崎市内及び近隣の中学校及び高等学校の要請により,職職場体験学習として中・高生の受け入れに協力している。
年度 受入件数 参加者数 見学受入機関名
2007 5 10
岡 崎 市 立 甲 山 中 学 校, 愛 知 県 立 豊 田 西 高 等 学 校, 岡 崎 市 立 竜 海 中 学 校, 豊 橋 市 立 中 部 中 学 校, 岡 崎 市 立 竜 南 中学校
2008 4 12
岡 崎 市 立 甲 山 中 学 校, 豊 川 市 立 音 羽 中 学 校, 岡 崎 市 立 六ツ美中学校,岡崎市立竜南中学校
2009 4 8
岡 崎 市 立 甲 山 中 学 校, 豊 川 市 立 音 羽 中 学 校, 岡 崎 市 立 東海中学校,岡崎市立竜南中学校
(2009 年度の数値は,2010 年 2 月末現在)
4-6-8 その他
(1) おかざき寺子屋教室
(社)岡崎青年会議所との共催で岡崎市内の小学校高学年を対象に,岡崎3機関の研究者が講義・実験を行い,学 校では普段体験できないことを体験してもらい,小学生に科学に対しての夢や憧れを持ってもらうために実施するも のである。1995年より年1回行われ,岡崎3機関の研究所が順に担当していたが,(社)岡崎青年会議所の都合で, 2006年度をもって終了した。
分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。
回 開催日時 会 場 講 師 テーマ
1
1995.11.11(土) 13:00-16:00
岡崎地域職業訓練センター
井口 洋夫 名誉教授 加藤 立久 助教授
めざそう理科博士
2
1996.10.26(土) 12:30-15:00
岡崎商工会議所中ホール 鹿野田一司 助教授 低温物理学実験
5
1999.10.23(土) 13:30-16:00
岡崎コンファレンスセンター 分子科学研究所
谷村 吉隆 助教授 目指せ! 科学者
8
2002.10.19(土) 14:00-16:30
分子科学研究所 魚住 泰広 教 授 僕も私も名探偵
11
2005..5.29(日) 14:00-16:30
山手3号館大会議室 宇理須恆雄 教 授
アトム誕生
—ナノテクノロジーの世界— 備 考
参加者:小学校5〜6年生 40〜50名程度
(2) 中学校理科副教材の作成
岡崎市・岡崎市教育委員会・理科教育振興協会の要請により,市内の中学生に,岡崎3機関の研究内容を知らせる ことで,生徒の自然科学に対する興味,関心を高めることを目的とした,理科副教材の作成に協力している。一般公 開を行った研究所が,翌年に協力し作成することが慣例になっている。作成にあたっては,各項目ごとに市内中学校 の理科担当教諭及び中学生徒2名程度が,分子科学研究所の担当教官を訪問して,インタビューを行い,両者が協力 して,資料を作成する。
中学校理科副教材(冊子)
「分子のしくみ」 1998年9月発行
中学校理科副教材(パネル)
「分子で見る物質の世界」,「光で分子を見る」,「鏡に映った形の分子(光学異性体)」,
「ナノサイエンス 10億分の1の世界」 2001年10月作成
(3) 岡崎市小中学校理科作品展
岡崎市教育委員会の要請により,岡崎市小中学校理科作品展に岡崎にある3研究所が輪番(原則として3年に1回) で体験型のブースを出展している。分子科学研究所は2007年に担当し,パネル展示のほか,子どもたち自らが色素 増感太陽電池の作製や酸化チタンカラフル塗装を体験できるブースを出展した。また,2009年は一般公開の宣伝と 未来の科学者賞の案内を行った。